あなたの肺は、意外と弱っている
ちなみに、お年寄り特有の疾病には「肺性心」も挙げられます。
肺の病気や機能の低下が原因となって、二次的に心臓に負担がかかり「心不全」となる病態です。高血圧や糖尿病などの持病も、大病も経験したことのない高齢者が突然死した場合、「肺性心」の可能性が考えられます。
解剖では、急性心不全の所見が認められますが、「心筋梗塞」などの典型的な虚血性心疾患の所見は認められません。そのかわり、重度の「肺気腫」などの肺疾患が存在すると、「肺性心」と判断することになります。
戦後の高度経済成長期を経験している年配の方は、炭鉱や鉄鉱で働いていた経験のある人や、大気汚染やヘビーな喫煙の影響を受けている人、結核感染者が多いこともあって、「肺気腫」「慢性閉塞性肺疾患」「陳旧性肺結核」「結核性胸膜炎」などの病気を持っている確率が高いのです。
そのため、肺が弱っていたり、呼吸機能が低下していたりします。そして、歳を重ねるとともに、二次的に心臓に負担がかかって死に至ってしまうわけです。
高齢者の体調不良の原因を医学的に調べるためには、検査だけでなく、過去の生活環境や職業、生活習慣なども考慮する必要があるのです。
※本稿は、『こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
『こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(著:高木徹也/三笠書房)
大人気ドラマ『ガリレオ』シリーズを監修し、5000体以上を検死・解剖してきた法医学者が、高齢者を襲う「まさか」の死因を解き明かす!