睡眠薬を常用すると、認知症リスクが高まる

不眠に悩む患者さんから、「睡眠薬を出してください」とよく言われます。ただ、高齢者やフレイルの人への睡眠薬はさまざまなリスクがあります。

高齢者の中には、睡眠薬を飲んで眠り、夜中にトイレに起きたときに、ふらついて転んでしまったという人がけっこういます。

実は、多くの睡眠薬には、筋肉を弛緩(しかん)させる作用もあります。高齢者やフレイルの人は、そもそも筋力が低下しているうえに、筋肉が弛緩するとさらに転びやすくなってしまいます。

日本では、主に4系統の睡眠薬が処方されています。日本で一番よく使われている睡眠薬はベンゾジアゼピン系です。

「ハルシオン」や「レンドルミン」が代表的な商品名ですが、これらは筋弛緩作用があるのでくれぐれも注意してください。

睡眠薬は、依存性の問題も指摘されています。

最初は「眠れないときに飲もう」と思っていた人が、いつの間にか「睡眠薬を飲めば眠れる」という感覚に変わり、やがて「睡眠薬を飲まないと眠れない」となっていき、睡眠薬依存症になってしまいます。

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は依存症になるリスクがあるとずっと言われています。しかし薬価が安いので安易に処方されています。

 

※本稿は『歩く人はボケない 町医者30年の結論』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

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歩く人はボケない 町医者30年の結論』(著:長尾和宏/PHP新書)

町医者を30年、臨床医を40年行なってきた私が断言できるのは、毎日歩行する習慣を持つと、認知症をはじめとする生活習慣病の大半は予防できるということです。
歩行といっても長い距離を速く歩く必要はなく、スキマ時間にちょこまか歩くだけで充分。薬いらずの、歩行と食事の健康習慣をご紹介します。
歩くと認知症が予防できる理由は他にもあります。是非、歩くことをささやかな快楽にしてみてください。