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これまでの人生で、手に入らない成功や不本意な評価、漠然とした生きづらさなどに悩まされたことはありませんか?「その原因は、実は、不安や怒りにまかせて他人を責めてしまう『外化』という心理メカニズムにある」と語るのは、早稲田大学名誉教授の加藤諦三さんです。今回は、加藤さんの著書『人はどこで人生を間違えるのか』から一部を抜粋しお届けします。

感情的になる人は何か不都合なことを抱えている

自分が感情的なのに、相手を感情的だと言うことがある。そう言って自分が感情的であることを認めたくない。自分にとって都合が悪いことがあると、そこを突かれて怒りに狂う。マインドレスな感情が爆発するのだ。

外化は、受け身の姿勢を取っている人がする行動である。この状態が自分が選んだことであると認識できれば、外化は止まる。外化を止めることが、自分に直面することだからだ。

また、どうでも良いことで「大変なことになった」と大騒ぎをする人がいる。これは演技ではなく、その人は本当に「大変なことになっている」とパニックになっているのである。

これは外化である。その人の心の中が「大変なことになっている」のだ。決して外の現実が大変なことになっているわけではない。

自己憎悪は楽しむ能力を破壊する。自分を憎んでいる感情の外化について、精神科医のカレン・ホルナイは述べている。

まず、積極的な形で憎悪が表現されると、他人は軽蔑すべき存在であると思うようになる。しかし本当は、自分自身を軽蔑すべき存在と思っている。

自己憎悪はとある形で表現される。それは相手を憎むことであり、これは積極的な形での表現である。つまり、自分の自分への憎しみを、他者を憎むことを通じて感じているのだ。意識の上では、ある人を憎悪しているが、実際には自分を憎悪しているに過ぎない。

実は、妬み深いのも独占欲の強いのも、わがままなのも自分自身なのである。それを周囲に外化して、「その妬み深い人さえいなければ」となる。「さえいなければ」というのは、言ってみれば「私が私でなくさえあれば」ということになる。

自分の中にあるものを外へと表していくことで、それが他人について歪んだ認識を持つ結果に至ると、カレン・ホルナイは説明している。自分の感情を他者に投影することが、自己憎悪を深める原因となる。