「じゃ、行ってくらぁ……おっかさん」
すると髪を結いながら「柯理(からまる)」と、蔦重の幼名で呼びかけたつよ。
その言葉を聞いて、心の奥が解けたかのように、蔦重の表情が止まります。
それからつよに「蔦重が強く育ったのは自分が捨てたからだ」と伝えられるとゆっくりと目をとじ、元の表情に戻った蔦重。
さらにつよから、強くなれない周囲の人にも気づけるようになれば、より男っぷりが上がる、と伝えられると、立ち上がって旅の準備に戻ろうとします。
しかしなぜか足を止め、せきばらいをした蔦重。
何かを決意した様子で「じゃ、行ってくらぁ……おっかさん」とつよに伝えます。
その言葉を聞いたつよは微笑みますが、そのまま振り返らずに「頼んだよ、重三郎」とだけ答えるのでした。