この先も生きていける気がした

相変わらず仕事もお金もないし、体力が多少回復したところで人並みには程遠いし、景気も良くならないし、パートナーもいないし、欲しい服も全然買えないし、ちょっと高いレストランにも行けないのに、生きているだけで幸せだと思う瞬間さえあった。

この程度で幸せを感じられるなら、この先も生きていける気がした。

健康というだけで、幸せなんだ。

幸せって、健康のことだったんだ。

健康に、なりたい。

私はそれまで、自分にはこれさえあれば幸せだと思えるようなものが一つもなかった。

好きなものはいろいろあっても、突き抜けた欲望や執着を持つことはなく、喉から手が出るほど欲しいものも、絶対に叶えたいと思えるほどの夢もなかった。

幼い頃から体力だけでなく根性もなく、何かの目標に向かって努力することも苦手で、何でもすぐに諦めてきた。

老人のような二十代前半を経て、初老のような二十代後半になった時、つまり一度失った健康を取り戻しかけた時、初めて見つけたのだ。

「健康」という、これさえあれば幸せだと思える、喉から手が出るほど欲しいものを。

 

※本稿は、『虚弱に生きる』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

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虚弱に生きる
(著:絶対に終電を逃さない女/扶桑社)

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