季節の移り変わりに敏感になる

これから寒くなっていきますが、寒い季節に人気の文様の一つが「椿」です。椿の花一輪をお太鼓に描いた帯姿の女性を街で見かけませんか? 

椿は、幹や葉の緑も、花の白色や赤色も、色が濃いのが特徴。それは生命力に溢れているので、邪気を寄せつけない神木と信じられてきました。また花が散るときには、花びらがはらはらと離れずに、塊として「ポトリ」と地に落ちます。

そこから「落ちても身を崩さず」と、女性の生きざまの手本であるとも語り継がれてきたのでした。

イメージ(写真提供:Photo AC)

実は着物や帯に描かれた草木の文様には、着るのに適した時季というものがあります。では、それぞれの草木の文様の着物はいつごろに着ればよいのでしょうか? 

たとえば、桜の文様の着物や帯はいつからいつまで着ることができますか、といった質問をよく受けます。

一般論でいえば、人は前向きに生きたいものですから、季節を少し先取りしたタイミングから進行中までです。

桜は咲き誇るのが3月下旬から4月中ですよね。2月中旬はまだ梅や椿の季節だから、桜はまだ感じないでしょう。とすれば、桜を待ち遠しいと感じるのは、2月の後半からでしょうか。そこから桜が咲き誇る間、桜の文様を着れば桜を感じられませんか? 

桜の季節が終わる4月の下旬になると、菖蒲や藤が待ち遠しくなりますね。ただ、地域によって温度差などから開花の時期は異なるので、差が出てくると思います。

こうして、季節の流れを楽しむ心の中を表現し、すれ違う方と互いに心を通わせることができるのも着物生活の楽しい一面です。