NTMは人から人には感染しないが、身近な場所に…
抗酸菌とは、結核菌、らい菌、それ以外のマイコバクテリウム属に属する非結核性抗酸菌(NTM)の総称を指します。
NTMによって起こった感染症を非結核性抗酸菌症(NTM症)といいます。日本で病気を引き起こすNTMは約30種類報告されています。
NTMは皮膚、骨、関節、リンパ系、軟部組織へ感染することが報告されていますが、大部分は肺へ感染し肺疾患(肺NTM症)として現れます。発症のリスク因子には、気管支拡張症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺病歴があること、また原因はわかっていませんが、基礎疾患歴のない痩せ型の中高年女性に好発する傾向があります。
主な症状として、咳嗽、喀痰、血痰、倦怠感、体重減少などが挙げられますが、症状の強さや病気の経過は患者さんによってさまざまです。
NTMは結核菌と同じ抗酸菌に属する菌ですが、結核とは異なり、人から人への感染はないとされています。結核菌は人間など動物の体内でしか生息することができない一方、NTMは環境生育菌であり、都市の給水システムなど身近な場所に生息しています。
菌を含んだ埃や水滴を吸入することにより感染すると考えられていますが、NTMの詳しい感染経路や病気の発症機序についてはわかっていません。
日本では近年、肺NTM症の罹患者が3.4倍に増え、現在では肺結核をしのぐ罹患者数となっています。近年の肺NTM症の増加傾向により、公衆衛生の面においてもNTMは重要な感染症となっています。
NTM症による年間死亡者数は、報告されているだけでおよそ2,360人で、そのうち肺NTM症による死亡者は少なくとも1,100人以上とされています。治療法には課題が残り、今後も罹患者・死亡者数の増加が予想されています。