エビデンスが確認されたダイエットと運動の効果
ここまで、読者の方の“希望”をくじくような話を書いてしまったきらいがありますが、一方で、エビデンスがある程度は出てきている生活改善手法もあります。
それは、「ダイエット」と「運動」です。いずれも、乳がんでエビデンスがあり、「患者さんのための乳癌診療ガイドライン2023年版」に、まず「ダイエット」について、次のような記述があります(*2)。
乳がんと診断されたときに肥満であったかどうかが、乳がん再発リスクと関連するかどうかを調べた報告はたくさんあります。ほとんどの研究で肥満の患者さんの乳がん再発リスクは、そうでない患者さんに比べて1.1~1.3倍高いことが示されています。その原因としては、肥満の患者さんではホルモン療法のアロマターゼ阻害薬や抗がん薬治療の効果が劣ることなどが考えられています。
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乳がんと診断された後に体重が増加し、肥満になった患者さんでは、乳がん再発リスクと乳がん死亡リスクが高いことがほぼ確実となっています。
以上より、すべての乳がん患者さんで、適切なカロリー摂取と適度な運動により肥満を避けることが強く勧められます。また、現在肥満の患者さんには、健康維持の観点から体重のコントロールをお勧めします。
また、「運動」についても次のような記述があります(*2)。
乳がんと診断された後の運動とその後の健康状態との関連を検討したこれまでの報告をまとめてみると、乳がんと診断された女性のうち、ある一定以上の運動を行った女性では、ほとんど運動をしなかった女性に比べて、病気を原因とするすべての死亡リスクがおよそ40%低くなっていました。また、運動を行った女性では、乳がんの再発リスクがおよそ25%、乳がんによる死亡リスクがおよそ35%低くなっていました。このような運動により再発リスクや死亡リスクが低下する効果は、肥満の有無に関係なく認められています。
再発や死亡のリスクを数十%のレベルで下げられるというのは、よく効く抗がん剤で達成できるレベルの話です。そのレベルの効果を、ダイエットや運動など、副作用とは無縁の生活習慣の改善で達成できる可能性が高いわけですから、患者さんにとっては大いなる福音です。
医療界でも、最近、「運動腫瘍学」という学際的な研究分野が立ち上がっていますので、運動ががん治療に与える影響について、これからも色々なエビデンスが出てくることが期待できます。
とはいえ、ダイエットも運動も、「医療行為」ではないため、患者さんに熱心に指導・チェックする主治医は、現状では必ずしも多くないのも事実です。ですから、患者さん自身がどれだけ意識して実行できるかにかかっています。
「そうは言っても、ダイエットは実行するのは辛いし、生活の質も下がっちゃいます」と感じる方も多いかもしれません。ダイエットはそうかもしれませんが、運動習慣はそれほどストレスもお金もかかる話ではないですし、生活の質もむしろ上がる可能性が高いです。今まで意識されてこなかった方は、これをきっかけに積極的に取り組まれてみてはいかがでしょうか。
*1 「ヘルスリテラシーって何だろう」(がんを学ぶ)
https://www.ganclass.jp/sites/default/files/2024-08/MED46O001B_health-literacy.pdf
*2 「患者さんのための乳がん診療ガイドライン2023年版」(一般社団法人日本乳癌学会)
https://jbcs.xsrv.jp/guideline/p2023/
※本稿は、『後悔しないがんの病院と名医の探し方~「有名病院」「ランキング」に頼らず、最善の選択を』(大和書房)の一部を再編集したものです。
『後悔しないがんの病院と名医の探し方~「有名病院」「ランキング」に頼らず、最善の選択を』(著:鈴木英介/大和書房)
どうしたら「本当に信頼できる主治医」にたどり着けるのか?
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