1992年にトムが初来日して以来、彼の通訳を務めてきました。コロナ禍でエンタメ業界が混迷するなか、彼が奔走して公開に漕ぎつけた『トップガンマーヴェリック』は、世界的な大ヒットとなって映画界に貢献しました。
彼は、観客を楽しませるためにいつも人並み外れた情熱をかけていて、大きな挑戦もいとわない。人柄も素晴らしいし、正真正銘のスーパースターです。
舞台上のトムはさらに、私の旭日小綬章受章のお祝いと33年になるつきあいに感謝を述べてくれて、その心配りがうれしかったですね。彼とは偶然にも誕生日が一緒で、毎年花束とメッセージカードがわが家に届きます。
じつは3年前、トムに通訳を引退すると伝えたんです。ずいぶん引き留めてくれたのですが、それまで伝えていなかった私の年を明かして、「年齢的に、通訳として100%の力を発揮できないのは、あなたにも申し訳ない」と言ったら、最後は理解してくれました。だって私、彼のお母さんと同い年なんだもの。
スターと呼ばれる人たちは、プロモーションの場で一生懸命に受け答えをしてくれます。それを瞬時に訳さなければいけないのに単語や名前がパッと出てこなかったり、メモをとるのが追いつかなくてもたついたりしたら、彼らに失礼ですから。
一方、字幕の仕事は自宅のPCで繰り返し確認できる。その点は瞬間勝負の通訳とは異なります。