「〈映画の字幕翻訳〉の仕事は変わらず続けていて、いまも新作映画を1本抱えてバタバタしているところです」(撮影:藤澤靖子)
映画字幕翻訳家になるという夢を43歳で叶えた戸田奈津子さんは、以来、1500本以上もの作品を手がけ、通訳を務めたスターとの親交も話題になるほど。病で左目の視力を失ったが、89歳のいまも仕事にプライベートにと精力的だ(構成:山田真理 撮影:藤澤靖子)

スーパースターから感謝を述べられて

3年前に「通訳業」のほうを引退したのですが、すべての仕事を辞めたと思った方もいらっしゃるかもしれません。「映画の字幕翻訳」の仕事は変わらず続けていて、いまも新作映画を1本抱えてバタバタしているところです。

かつて映画をフィルムで撮影していた頃は、字幕を入れて現像した後に映像を変更することはできませんでした。

ところが、いまの映画はほとんどデジタルなので、技術的にいくらでも修正できる。「あの場面を切って、こちらに入れました」とか、「このセリフを変えました」と言われたら、大急ぎで字幕も変えなければなりません。

以前なら、映画1本につき1週間から10日で仕上げて手放せた仕事が、最近では1ヵ月以上も振り回される。最後はもう、修羅場になるんです。

とくにハリウッドの大作映画はその傾向が強くて。今年公開された『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』なんて、完全に編集が終わったのは、トム(主演のトム・クルーズさん)たちが来日する世界最速公開イベント「ジャパンプレミア上映」のわずか1日前ですよ!

私がブツブツ文句を言ったものだから、舞台挨拶のとき、トムが客席にいた私に「トダさんには申し訳なかった」と謝ってくれました。(笑)