面接を利用して“お相手”探しをする男たち
元同僚が、最近採用面接で訊かれたという。
「彼氏はいるの?」
結婚退職を危惧しているのかと思い、「いません」と彼女は答えた。しかしプライベートな質問は続き、最後にこう言われたという。
「永久就職する気ない? 実は僕も独身なんだ」
それですべてが理解でき、彼女は背筋が凍ったという。
数分間の面接でも、イヤな思いをすることがある。20数年前のことであるが、私も3度ほどそのような面接を受けている。
1つ目は、仙台市内の大手パチンコ店の事務職だった。面接官は社長と専務。何故か途中から、社長が専務に、席を外すように言ったのだ。一気に緊張の増す私に対し、社長はこう質問した。
「結婚のご予定は?」
「ありません」
社長は深く頷いた。
「勤めても、結婚までの腰かけ程度にしか考えていない人がいるから、一応聞いてみたんです」
結婚後も働く意思があることを伝えると、今度は、「恋人は?」と訊いてきた。
「おりません」
社長は大仰に驚いて、「本当にいないのぉ?もったいないなぁ」上目遣いで見るのだった。
非礼さに固まっていると、社長はにやりと笑ったのだ。
「どうだ、夜は私の相手をしないかい?」
一呼吸置き、言葉を継いだ。
「いや、タダでというわけじゃないんだよ。給料のほかに手当はきちんと払うからさ……」。
粘つく視線を払いたかった。
言葉を失くして、黙していると、「別に、彼氏はつくってもいいんだよ。私はそういうのには、寛容だから」不躾な言葉を吐くのだった。視線を押し返すように、私は訊いた。
「奥様はいらっしゃるのですか?」
「いるよ。でも、それはそれ、これはこれだから」
あっけらかんと言っている。
「すみません」
私は、席を立った。
「辞退させていただきます」
お辞儀をして荷物を手にし、早々にその場を立ち去った。