ワガママや反抗的な言動は認知症の初期症状

お仕事をしながら、一人暮らしのお母さまの生活を支えるために、毎週ご実家に通っていらっしゃる。ご自身の親とはいえ、さぞや大変なことだと思います。

それなのに、感謝されるどころか、お母さまのためを思って手配したことがすべて空回りして、徒労感でいっぱいになっている。こんなことならもう関わりたくない、というのが現在の心境でしょうか。

そんな相談者さんが穏やかな気持ちでお母さまと接するために、私からのアドバイスは2つあります。

まず、1つめは、「母のこんな言動で困っています」と、お母さまの主治医ときちんと話をすることです。私も、週に1度、認知症外来を担当しているので、認知症の患者さんとそのご家族とお話しする機会がありますが、ご家族が抱えている悩みの中で最も多いのが、相談者さんと同様に「言うことを聞かなくなった」「家族に反抗するようになった」なんです。

これはまさに認知症初期の症状かもしれません。認知症になったことで、それまでは「こんなことを言っちゃいけない」と、自分の思いを抑えていた脳の抑制がはずれて、幼子のように言いたい放題になってしまう。

「人の悪口ばかり言う」のも、認知症になって脳のコントロールが利かなくなったことが一因だと思われます。それがわかれば、相談者さんの心も少しはラクになるのではないでしょうか。

私も、ご家族には患者さんの脳のMRI画像をお見せして、「前頭葉の部分が萎縮しているので、理性のコントロールが利かなくなって感情的になるのです」と、医学的な根拠を明らかにしながら説明しています。

もちろん、それで問題が解決されるわけではありません。ただ、「認知症という病気なので、反抗されてもできるだけ優しく、笑顔で接してあげてください」とお願いすると、ご家族の理解が進み、「以前より穏やかになり、関わりやすくなりました」とおっしゃる場合が少なくないのです。