松本大変

そんな大それた事件を起こしたのだから、忠恒は、師就によほどの恨みがあったのだろうと思いきや。なんと、二人は初対面で面識すらなかったという。

忠恒は、その日のうちに川越藩に預けられることになり、松本藩の水野家に下った処分は「改易」。非常に重い処分で、大名家としての水野家はお取り潰しになり、領地や城、江戸屋敷が没収された。この一連の出来事は「松本大変」と呼ばれた。

『名城怪談』(著:田辺青蛙、監修:北川央、イラスト:うめだまりこ/エクスナレッジ)

何故このような出来事が起こったかというと、一説によると、戸田家の江戸屋敷では連日、祝宴が開かれており、元より酒に目がない水野忠恒は始終酔っぱらっており、将軍拝謁の前夜から挙動がおかしく、妙な言葉を口走ったりしていたそうだ。

松本藩内では、酒におぼれたのは義民の多田加助の霊に悩まされていたからだという噂や、水野忠恒の不可解な結末に、多田加助の無念の思いが通じたのではないかなどと、話す者がいたそうだ。