江戸詰の一人の藩士

またこの際、騒動当時の藩主である水野忠直も合祀された。騒動の折、藩主忠直は江戸にいたが、鈴木伊織という江戸詰の一人の藩士が加助らの処刑に反対し、藩主から中止の許しを得、自ら騎馬で松本に向かった。

ところが、松本に入った途端、馬が倒れ、処刑に間に合わなかったと伝えられる。松本市内には、伊織の徳を讃えて名付けられた「伊織霊水」という井戸が復元保存されている。

加助神社は、昭和35年(1960)に、神社本庁から「貞享義民社」として認められ、現在はそれが正式名称となっており、神社の西北裏手には加助の墓がある。

※本稿は、『名城怪談』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

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