「異字同訓」の漢字

「こたえる」には「持ちこたえる」のように、我慢する、こらえる意味の「堪える」もありますが、これは平仮名で表記します。なお、「応える」を「こたえる」と読ませるようになったのは2010年の常用漢字表の改定から。それまで「応える」は記事上では平仮名表記となっていました。

「応える・答える」以外にも、判断に迷う語句はたくさんあります。代表的なものでは「超える=基準・限度・枠など」と「越える=壁・期限・権限など」、「作る=主に規模の小さいもの」と「造る=主に規模の大きいもの」と「創る=創造、独創を強調」といった具合です。

さらに「取る・捕る・採る」も、出てくれば毎回のように迷います。こちらは対象物が重要で、果実・コメ・大量の魚・点数などは「取る」、鯨・ネズミ・虫・ボール・(少量の)魚などは「捕る」、貝・木の実・山菜・キノコなどなら「採る」と使い分けます。さらに指揮や筆を「執る」、映画や写真を「撮る」もあります。

このような「異字同訓」の漢字は、文化審議会国語分科会も「使い分け例」(2014年2月)として報告していますが、「明確に使い分けを示すことが難しいところがあることや、使い分けに関わる年代差、個人差に加え、各分野における表記習慣の違い等もある」としており、校閲作業時はやはり不安が先立ってしまいます。どんなに自信があってもハンドブックを見ながらの最終点検は欠かせません。

それにしても日本語は難しいですね。ものによって使い分けのルールがあいまいだったり、人によって解釈が変わってしまったり……。改めて日本語の奥深さを再認識しました。

※本稿は、『いじわるな日本語 ~校閲の現場から~』(産経新聞出版)の一部を再編集したものです。

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