寒さに耐えられる体に大変身
さっきカエルは仮死状態で冬を越すので冬眠とは呼ばないと申しました。このシマリスの冬眠とカエルの仮死状態とでは大いに違いがあります。
冬眠中のシマリスを強くつついたり、大きな音を聞かせると、すぐに呼吸が速くなって体温が急上昇し、30分ほどで37度に戻って目を覚まします。冬眠中でも感覚はちゃんと働いていて危険に対応できるのです。それに対して越冬中のカエルは、何をしても眠ったままです。
またシマリスの場合、カエルのように外気温の下がるにまかせているのではなく、5度を下回ると、積極的に熱を出して体温がそれ以下にならないようにします。なにせ体が凍ってしまったら一大事です。細胞の中に氷ができると細胞膜が破けるし、細胞の中がめちゃめちゃになってしまいます。ですから冬眠中でも、体温を一定に保つ機構はきちんと働いています。一定に保つべき温度が、冬眠中はうんと低い温度に設定し直してあるのですね。
冬眠は200日ほど続くのですが、シマリスはずっと眠り続けるわけではありません。数日から1週間眠ると目覚め、体温を37度に戻して蓄えたドングリを食べ、トイレに行き、また眠る……これを繰り返します。
シマリスは体温を下げ続けていても、すぐに回復できるのですが、こんなことは人間にはできません。ヒトは体温が20度以下になるともう意識を失い仮死状態になります。心臓も止まり、そのまま30分経過すると凍死。じつはシマリスも夏場に5度の部屋に入れておくと、数日で死んでしまうんですね。夏のシマリスは、われわれ同様寒さに弱い。冬眠に入る前に寒さに耐えられる体に大変身します。
シマリスには一年周期の時計が備わっていて、それに従い、秋になると体が作り替えられます。そのことに関わっているらしい特別なタンパク質があり、これはふだんは働けない形で血液中に存在しているのですが、冬眠の時期になると脳に移動して働き始めます。