巣籠もり名人

冬眠する動物は長生きです。シマリスは実験室で11年生きたそうです。哺乳類の寿命は体の小さいものほど短く、シマリスのサイズなら2〜3年が寿命です。それが11年も生きた。冬眠しないものより4〜5倍も長いんですね。

小形のコウモリも多くが冬眠しますが、寿命が20年から30年で、これも同サイズの動物の10倍も長い。冬眠動物は長寿なのです。「冬眠中は活動していないのだから、体が磨り減らず老化しない。その分、長生きになるのだろう」と単純に考えればそうなりますが、それが正しいなら、延びるのは冬眠期間の分だけだから、1年の半分冬眠するものは寿命が2倍になるはずです。ところが現実にはその何倍も長生きで、その理由はまだ明らかになっていません。

考えられることは、冬眠中はふつうなら体が壊れてしまう厳しい環境を生き抜くのだから、こういう動物たちは体が壊れにくくできているし、壊れてもすぐに直す能力も持っているのではないか。

どうも冬眠動物は特別な力を持っているようですね。「寒いと免疫機能が低下しているから注意しよう」とか、「感染症にかかって熱が出るのは、体温を上げてウイルスをやっつけているんだ」とか言われています。ところが冬眠中は体温が下がっているにも拘わらず感染症にかかりにくいし、冬眠中に発がん物質を皮膚に塗ってもがんができなかったなどという研究もあります。

まだまだ不思議なことがあります。半年も眠っていても、筋肉は落ちないし骨粗鬆症にもならない、床ずれもしない。それに冬眠前にガンガン食べて太ってもメタボリック症候群にならない。さらに冬眠中に強い放射線を照射しても大丈夫だったとか、アルツハイマー病に特有の繊維が現れても、また消えてしまうなどという報告もありますから、老化の原因に抵抗できるのかもしません。

こんなふうに冬眠動物には不思議な力が備わっています。だからこそ巣籠もり名人になれるのでしょう。

※本稿は、『すごい生きもの春夏秋冬』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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すごい生きもの春夏秋冬』(著:本川達雄/中央公論新社)

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