NASAは諦めない

それでも、NASAは諦めなかった。わずか5週間後には予備機を整備し、「マリナー2号」として打ち上げた。今度は、問題の横棒も忘れずに足されていた。

マリナー2号は、無事金星に接近し、「人類史上初めてほかの惑星の探査に成功した宇宙船」の栄冠を手にした。さらに、この探査船が地球に送ったデータは、驚愕の内容だった。

マリナー2号によると、金星の表面温度は425℃で、鉛が溶けるほどの灼熱だった。また、数年後に別の探査機が明らかにしたデータでは、大気のほとんどが高密度の二酸化炭素で、気圧は地球の90倍もあった。

これでは、人類の移住はおろか、SFの定番であった金星人もいなそうだ。実は当時、金星の雲の下には地球の熱帯のような環境があるかも、と淡く期待されていたのだが、これはまったくの幻想であった。

さらに、マリナー2号は、金星の環境だけでなく、太陽風についても証明した。太陽風は、現代では通信やGPSの機能を乱す要因として知られているが、当時はまだ理論上の仮説にすぎず、直接観測した意義は大きかった。

それにしても、1号で66億円を吹き飛ばしても、すぐに「次行こう。2号だ!」と動いた胆力(と経済力)には、正直敬服する。

NASAには、失敗を「未知のデータを得るプロセス」とみなす風土があるのだが、その考え方が遺憾なく発揮された結果だろう。こうした、メゲない人々の挑戦によって、人類の宇宙開発は日々進歩している。

※本稿は、『世界を変えた「凡ミス」図鑑:昔の人たち、やらかしすぎ!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

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