事件、事故、自殺、または孤独死などが原因で、人が亡くなった不動産を指す「事故物件」。古典エッセイスト・大塚ひかりさんは、古典文学に登場する曰く付きの邸宅を長年ファイリングするなかで「事故物件で不幸に遭う人がいる一方、大きく運が開ける人もいる」ことに気が付いたそうです。そこで今回は大塚さんの著書『事故物件の日本史』より一部引用、再編集してお届けします。
「事故物件」吉良邸跡を蘇らせたのは
古典文学には、繰り返し不幸が起きる事故物件に対する呼び名「凶宅」がある。
同じ「凶宅」と呼ばれる屋敷でも、被害を受ける者と受けない者がいる。そのカギは、過去の悲劇への理解と敬意、そして周囲(家族)を納得させる説得力である。
もう一つ、まったく異なる文化圏からやって来た、違う価値観を持つ「異人」とも言うべき者は、被害を受けないことがある。
「事故物件」と題するマンガには、怪奇現象が起きてもまったく気にせず、事なきを得た、勉学にいそしむ外国人留学生のエピソードがあって、もとよりフィクションであるとしても、人の心理と物事の道理をよく取材した作品であると感じた(「事故物件」『強制除霊師・斎 自殺女房』小林薫著、斎監修)。
また、事故物件に住んでブレイクした「事故物件芸人」松原タニシ氏の著書には、事故物件を買い叩く中国人が登場し、これまた、さもありなんと思ったことだ(『事故物件怪談 恐い間取り』3)。
不退転の覚悟で勉学に励む外国人留学生や、5000年の歴史と筋金入りの合理主義で鍛え上げられた中国人商人にとっては、たかだか近代以降にできた物件で多少の怪異があっても、意にも介さぬということかもしれない。