いしいしんじさんの回答
あなたは、これまで、きっと大切に、お金を使ってきた。使いみち、使う相手こそが大事なのだと、信念をもって生きてきた。だからこそ今、この世で消え入りそうに思ってしまう。自身の心根が、汚されてしまったように感じている。
淡々とつづられた文面からわかる。汚れてなどいない。あなたらしい清廉さ、自分のこころさえごまかさない正直さは、これっぽっちもくすんでいない。
妻、母、息子、孫たちのこころには、あなたは変わらず、夫、息子、父、祖父として像を結んでいる。命をとられなくてよかった、と語りかける妻の声が、読んでいて胸に迫る。
いまからでいい。少しずつ、お金をためる。毎日、毎週。おつり。小銭。ためていることは妻には話す。いくらたまっているかは話さない。
そうして、ある金額に達したら、ささやかなものを買って、妻に贈る。母、息子、孫たちにも、同じように贈る。恒例の行事として、末永くつづける。
お金とは何か。お金を使うとはどういうことか。あなたからの贈り物は、贈られるひとたちにとって、ささやかであれ、きっと特別な、人生の栞となる。よきひとによきものを贈る。そのことをどうか、こころの糧に。
