できるだけ良質でふつうのものを
愛情といえば、この下着売場のいちばん目立つコーナーがすごかった。ショッキングピンクのスケスケのセットや、黒いレースのショーツやブラがいっぱい飾られていて、私など頬を赤らめたものだ。まるで風俗で使われるような色と形である。
「そうかあ」
合点した。
「田舎は娯楽がないもんなあ……」
何を言いたいかというと、下着はその人の人生の一端が見えるものなのだ。
若い頃は「非常用」とか言って、イタリアやフランスで、工芸品のような下着を買ったものであるが、まるで夢のように昔の話である。今の私はできるだけ良質でふつうのものを身につけている。冬はババシャツという防寒向きのものをしっかりと着る。女はババシャツを着た時に、すべてのことを諦めるはずだ。
※本稿は、『80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
『80代になるとたいていボケるか死ぬ。70代は神様から与えられた特別な時間』(著:林真理子/幻冬舎)
72歳の人気作家が本音で語る「健康」「おしゃれ」「仕事」「お金」「人間関係」「趣味」。
確実に近づく「その日」を見つめ、今の1分1秒を楽しんで生きるための、痛快・人生論。





