でも、浅利さんに退団させられそうになったこともあった。『青い鳥』(76年)でチルチル役をやったときの千穐楽で、舞台上で芝居をしている僕に浅利さんが下手袖から、「そんな演出をした覚えはない」と言ったんです。そして楽屋で「市村くんとは今後、仕事はないと思ってくれ」。
思い当たることはありました。お客さんを喜ばせたいと思っているうちに、お客さんにウケる芝居をしてしまって、純粋なチルチルではなくなっていたんです。
それでその反省の気持ちを手紙に認(したた)めて、長野県大町の山荘で稽古をしていた浅利さんに届けに行ったら、「読んだよ。そういう気持ちならこれからも一緒に芝居をやろう。夜はすき焼きだから食べて帰れ。寒かっただろう」とおっしゃって、自分が着ていたカシミヤのセーターを脱いで「これ着ろ」。
ね、ここでも飴と鞭でしょ(笑)。そうやって一生懸命育ててくれたんだね。
