今後の課題
ただし、世帯ごとにみると、実質年貢負担率はかなり多様だった。負担率40パーセント台が13世帯、30パーセント台が12世帯と多いが、一方で20パーセント台も6世帯、10パーセント台も5世帯あった。
最低は7.3パーセント、最高は87.6パーセントだった。また、各世帯の所持地の石高と年貢負担率との間に、単純な相関関係(正比例の関係)はなかった。同じような所持石高の世帯でも、負担率には差があったのである。
なお、実質年貢負担率が87.6パーセントの家でも村での暮らしを続けている反面、実質年貢負担率がもっと低いのに経営破綻する家もあった。
年貢負担が家の経営に与える影響は一様ではなく、こうした差がなぜ生まれるのか、家ごとの個別具体的なあり方の検討が今後の課題である。
※本稿は、『年貢-せめぎ合う江戸時代の領主と百姓』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
江戸時代、税の中核は年貢だった。
大名領が石高で表されるように、年貢は社会全体のありようまで規定していた。
だが、その実体はあまり知られていない。
年貢の成立から終焉までを巨細に解説する。
出典=『年貢-せめぎ合う江戸時代の領主と百姓』(著:渡辺尚志/中央公論新社)
渡辺尚志
歴史学者
1957年東京都生。東京大学文学部国史学科卒。1988年、同大学院博士課程単位取得退学、国文学研究資料館助手、一橋大学社会学部助教授、同大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻歴史社会研究分野(社会史日本)教授等を経て、現在、松戸市立博物館館長。一橋大学名誉教授。1995年「近世の豪農と村落共同体」で東京大学より博士(文学)の学位を取得。専攻・日本近世史、村落史。主著『近世の豪農と村落共同体』(東京大学出版会、1994)、『江戸時代の村人たち』(山川出版社、1997)、『近世村落の特質と展開』(校倉書房、1998)、『近世の村落と地域社会』(塙書房、2007)、『豪農・村落共同体と地域社会 近世から近代へ』(柏書房、2007)、『百姓の力 江戸時代から見える日本』(柏書房、2008/角川ソフィア文庫、2015)、『百姓たちの江戸時代』(ちくまプリマー新書、2009)、『村からみた近世』(校倉書房、2010)、『日本近世村落論』(岩波書店、2020)、『近世の村と百姓』(勉誠出版、2021)、『川と海からみた近世』(塙書房、2022)、『藩地域論の可能性』(岩田書院、2023)、『日本近世・近代村落史研究』(勉誠社、2026)、『松戸の江戸時代を知る』(1)~(7)(たけしま出版、2023~2026)。