(写真提供:Photo AC)
日本の現在の税制における中核(基幹税目)は、所得税、法人税、消費税の3つであり、これらは『基幹三税』と呼ばれていますが、江戸時代の税の中核であった年貢についてどれくらいご存知でしょうか。歴史学者である渡辺尚志先生は「江戸時代は年貢抜きには語れない」と語ります。そこで今回は渡辺先生の著書『年貢-せめぎ合う江戸時代の領主と百姓』より一部を抜粋し、江戸時代の生活や年貢についてお届けします。

江戸時代特有の金融慣行

村人同士の支え合いの一例として、無年季的質地請戻し慣行という、江戸時代に広範にみられた興味深い慣行を紹介しよう(1)。

現代では、物品を質入れして借金する際には請戻し期限(借金の返済期限)が明確に設定され、期限までに請け戻せなければ質流れとなって、担保物件の所有権は永久に移転してしまう。

土地を担保に銀行などから金を借りる場合(不動産担保ローン)も同様である。われわれは、契約である以上それが当然だと考えているが、江戸時代には必ずしもそうではなかった。

期限が来ても請け戻せず質流れになった土地に関して、元金を返済しさえすれば、質流れから何年経っても土地を請け戻せるという慣行が広く存在していたのである。

(1)…白川部達夫『日本近世の村と百姓的世界』校倉書房、1994年
白川部達夫『近世質地請戻し慣行の研究――日本近世の百姓的所持と東アジア小農社会』塙書房、2012年