月曜日が来る。火曜日を越える。水曜日をやり過ごし、木曜日で一息つく。
毎日毎日、会社と家を往復しながら、綾香は「半袖の季節が来る前に」「すっぴんだって怖くない」「マイナス何歳!」といった痩身や脱毛、美肌など、人の見た目に関する広告が町中にあふれていることに気づいた。一度気にし始めるとここにも、あそこにも、と目に入る。唯と体毛に関するやりとりをするまで、それらの広告を目にしても、あまり認識していなかった。
遅めの昼休憩をとり、会社ビルの屋上で手製の鮭とわかめのおにぎりを頬ばっていると、弁当袋を手にした同期の小畠(おばた)みのりが顔を出した。いつも笑顔で物腰が柔らかく、男性社員から「癒やし枠」みたいな扱いをされている彼女だが、屋上の扉を開けた瞬間の目はうつろだった。綾香に気づき、みのりは「おう」と無表情のまま鈍い声をもらすと、綾香からひと席空けた位置のベンチに座った。子熊のアップリケがついた弁当袋を開き、スープジャーと俵型のおにぎりが二つ入ったタッパーを取り出す。コクのある香りとスープの色から察するに、ジャーの中身はキムチチゲのようだ。
折りたたみスプーンでぬるそうなチゲから肉団子をすくい、無言でそれを咀嚼したみのりは白っぽい冬空を見上げてため息をついた。ふと、綾香に顔を向ける。
「午前中、製造がばたついてたけど、なにかあった?」
「朝一で神奈川工場のさつまいも饅頭を作る機械が調子悪くなって、緊急点検」
「うわあ」
「契約してる修理業者さんに見てもらったんだけど、けっこう深刻でオーバーホールしないと無理だって。出勤してからずっとあちこちに出荷遅れますっておわびの電話してる」
「えらいこっちゃ」
「総務人事は元気?」
「元気なわけないじゃーん。年末調整だよ? みんな早く申告書出して? 社史の編纂も進行やばいし、南町店のストーカー案件もまだ片付いてなあい」
「南町……あの、お客さんが退勤後のパートさんを出待ちしてつきまとったってやつ?」
「そうそう。ちょっと危ないかもって話で、本人とご家族、警察に相談しながら、そのパートさんの異動先を調整してる。販売だけでなく製造にも興味があるって言ってたし、しばらくは人前に出ない現場の方がいいかも。で、南町店も、もともと人手不足で回ってなかったのにこれでさらに人数が減るから、店長の連勤がやばいの。他店から応援入れつつ、早めに人員を補充しないと。でも今の時期は求人集まらないんだよなあー……」
