落成式で賑わう大正時代の百貨店の窓辺で、母親雀は父親雀と合流した。どうして俺たちは過去にいるんだろう、ととまどう父親雀。地上では、店長の男性が正面玄関に設置された銅像を覆う白布を取り払うところだった。「お店は新しくなりましたが、私たちはこれからも『さえずり屋』がかかげた三つの心得を忘れずに、お客様に最先端のお買い物を楽しんでいただけるように精進いたします。伝統を守ること、挑戦を恐れぬこと、そして、明るい未来を築くこと。これら三つの心得を守るべき宝に見立て、胸の奥深くで温めながら店員一同、歩みを進めて参ります」。盛大な拍手がわき、玄関の扉が開かれる。人々は喜びで顔を輝かせて館内に入っていく。しかし突然風向きが変わり、焦げた臭いが辺りに広がった。空を行くたくさんの爆撃機が町中に火の玉を降らせる。町が燃える。空襲だ。百貨店にも火が移り、美しい建物が燃えていく。ピイピイと親を探す二番目の坊やの声がした。屋上の方角だ。坊や、坊や、と必死で呼びかけ、雀の一家は屋上を目指して飛翔する――。
これまで百貨店に縁がなかった人たちへ向けた、自己紹介的なニュアンスが強いイベントなのだろうか。
謎解きブックの指示に従って屋上庭園へ向かいながら、吉晴はそう推察した。だとしたら謎やストーリーを作るだけでなく、クライアントとの綿密なやりとりも必要な、大変な仕事だっただろう。頑張っている、と日下部をねぎらいたい気持ちになった。急な再会に驚きつつ、三島と梅木はそれぞれが知る同期生の近況を交換している。
エレベーターは静かに上昇し、やがて屋上階に辿りついた。
