『レズ風俗で働くわたしが、他人の人生に本気でぶつかってきた話』橘みつ・著

 

身体にじかに触れた人だけに話せる気持ちもある

著者は、大学でジェンダー・セクシュアリティを学んだ。大学でも、就職活動でも、自分の生き方を真剣に考えたのに、就職先でいきなり挫折する。体調が悪化し、心と体のバランスを失った。産業医に相談したことが裏目に出て、試用期間のみで退社させられた。

当面の生活のためにホステスもしたが、店の女性が男性客による採点対象でしかないことに嫌気がさし、女性客相手の仕事をしようと思い立つ。それがレズ風俗だった。業界トップのレズ風俗嬢をお手本にした。そこから著者の「学び」は火を噴くように加速する。自らレズ風俗嬢として働き、その後独立・開業を果たす。

この物語を、全女性に読んでほしい。レズ風俗には、性的満足よりもっと根源的な癒やしがあるようなのだ。「触られることが苦手すぎて、自分は異常だと思う」「夫とセックスできない」「自分を変えたくて焦っている」といった、かならずしもレズではない女性客が利用している。ひとりひとりの悩みはその人だけのものだが、読者はきっと彼女たちの苦しみに自分自身を重ねて見ることになる。

身体にじかに触れた人だけに話せる気持ちもある。むりにでも話すことで、本心を初めて自覚することすらある。だから風俗はカウンセリングの一形態なのだと知った。

この本をわたしが一気に読み通したのは、すべてが途中経過の報告だからだ。わかったことやできたことの決算(手柄の列挙)ではない。〈物語の結末なんて、最後の最後にしかわからない。それって不安定ってことでもあって、どんな可能性にも満ちているってことじゃないかとわたしは思う〉。しめくくりの言葉にうたれた。

『レズ風俗で働くわたしが、他人(ひと)の人生に本気でぶつかってきた話』

著◎橘みつ
河出書房新社 1500円