(写真提供:Photo AC)
食欲の秋。季節を感じながら食べる食材が、私たちの食卓から消え始めているという事実をご存知でしょうか。「日々の食卓に並ぶ魚介類が日本近海で激減している。原因は二酸化炭素増加による水温上昇や海洋酸性化に加えて、違法、無規制に行われる乱獲・密漁だ」と語るのは福井県立大学名誉教授であり、水産学博士の矢野勲先生です。そこで今回は矢野先生の著書『日本の海から魚が消える-温暖化、IUUの問題から陸上養殖の挑戦まで』より一部を抜粋し、お届けします。

アニサキス食中毒の多発

2015~23年の間に、線虫であるアニサキスの幼虫が寄生したサバやカツオ、アジ、サケ、イカなどを生の刺身として食した人に、みぞおちの激しい痛み、吐き気、嘔吐を引き起こす食中毒が急拡大し、患者の数は2007年以前に比べると60~80倍ほども増えている。

なぜ、アニサキスによる食中毒患者が増えたのか。

その原因の一つは2012年に食品衛生法施行規則の一部が改正され、アニサキスによる食中毒の報告が義務化し、医療機関による報告が増えたことである。

しかし、食品衛生法改正直後に比べて、アニサキスによる食中毒患者はさらに5倍ほども増加し、アニサキス幼虫を持つ魚介類の種類も増え続けていることから、昨今の患者急拡大の原因は、2012年の法改正だけでは説明しきれない。