体調を最優先に、今できることを
しかし、そこは高齢者が主役の会社だ。何事も計算どおりには進まない。法人化からわずか1ヵ月後の今年2月、陽子さんが骨粗しょう症による圧迫骨折で入院。一人残された勝さんは、妻のいない不安から一時的に認知機能が低下し、ミシンの前に座る頻度も激減してしまう。
さらに6月、骨折から回復しリハビリに励む陽子さんに、腎臓の病気が見つかったのだ。
今度ばかりは廃業も考えたという千里さん。それを思いとどまらせたのは、病院の待合室で陽子さんが口にした言葉だった。
「散歩中ばったり会った人に、『お店を開いてくれたら、いつでもバッグが買えるのに』って言われたんよ。このあたりはお年寄りが増えて、一人で寂しい人もいるから、ふらっと立ち寄ってもらっておしゃべりできるお店を作りたいね。その目標があれば、治療なんてへっちゃら。乗り越えてみせるよ」
前向きな母の言葉を聞いて、千里さんは吹っ切れた。