がま口バッグの製作に欠かせない、大事な相棒。木箱に取りつけた収納ホルダーは勝さんのお手製

勝さんは、「バッグを受け取った人たちが、『ありがとう』と手紙を送ってくれるんですよ。それがうれしくてね。まさかこんなことになるとは思わんかった」と、目を細める。時が流れるにつれ、千里さんの意識も変わっていった。

「最初は親のために『やってあげている』とどこか上から目線でしたが、父から学ぶことがたくさんあると気づいたんです。戦中戦後を生き抜いた世代の『もったいない精神』は筋金入り。失敗した金具は加工して再利用し、布もほどいて縫い直す。仕事は丁寧だし、どんな作業も諦めずにやり遂げる。その職人魂はさすがです。こうして一緒に作業をしていなかったら一番距離を置きたい人やったけど、今は尊敬する人になりました」

娘の言葉にまんざらでもない様子の勝さんだが、「この子ときたら、『下手やな。売り物にならへん』と平気で言うんですよ。腹が立つから、『できる』と強がっては後悔ばかり」と苦笑する。この負けず嫌いな性格が、技術の向上に繋がっているのだろう。

バッグ作りで初めてまとまった収入を手にした勝さんは、陽子さんのリクエストに応えて 指輪をプレゼントしたのだとか。ようやく孫たちにお年玉をあげる余裕ができた、と夫婦で喜ぶ。

22年には千里さんの夫・祐二さんがチームに加わり、より強固な体制へと進化。SNSで注目を集めてから5年半が経った今年1月には、株式会社として新たな一歩を踏み出した。