ひとり思い切り泣いてみる
チッチは、コンプレックスだらけだった幼いころの私がモデルです。
とても内気な性格で、いつもひとりで遊んでいるような子どもでした。兄3人、妹1人の5人きょうだいのなかほどの目立たない子。兄たちは理数系に進学して成績もよく、妹は美人。私は勉強が大嫌いな落ちこぼれで、おまけに不器量ときていました。
小学校ではテストがわからないので、答案の裏側にまで漫画をびっしり埋めて提出していました。父は高校の数学教師でしたが、よく叱られ勉強を特訓されました。でも、できない。毎日のように「私はどうして人より何もかも劣っているのだろう。神様はどうして、私にばかり意地悪するの」と泣いてばかりいました。
孤立しがちな私の心の支えとなってくれたのは、母でした。社交的な母は、家計が苦しいのに、戦災孤児のために募金活動をしてまわるような心優しい人でもありました。そして母はいつも私の絵をほめてくれました。
私がチッチを描こうと思ったのは、この母の強烈な喪失体験にあります。
母が亡くなる前のことです。私が描いた絵を見せると、病床の母はいつも目を細め笑顔を見せてくれました。私は「私の絵で母を笑わせれば、病気が治るかもしれない」と、毎日のように絵を描いては持っていっていました。しかし結局、母は亡くなり、私の目の前からいなくなってしまったのです。