夏の料理は前日からはじまる

それから昔より格段に進歩したのが食卓の演出で、食器はガラスになる。何よりもまず、箸枕がガラスのものになる。私は箸枕のコレクションに凝っているのである。いまだに大阪の夏のご馳走はハモだが、そのほかお昼に魚を煮ておいて、さめたのを冷蔵庫に入れ、 煮凝りとともに食べる、――夏の料理は前日からはじまるといってもいいくらいで、手順をよく考えないといけない。

スダチは夏から秋に手に入るので、これを輪切りにして盃に浮べる、これもお燗をした酒なればこそである。きりっとした匂いと爽やかな酸味が添い、涼しげだが、ながく酒に漬けるのは邪道で、すぐ引きあげること。

(写真提供:Photo AC)

おからをたく。これも前日ぐらいにたくのがいい、よくたきしめたのを冷蔵庫に冷やしておき、それを食べる。人それぞれの味だが、私はぱらぱらに煎るのは好きではなく、しっとりと煮つけたのを冷やす、これに限る。

更に焼きナスを、かねて焼いて冷やしておく。これも昼には用意しないといけない。

この反対に、汗をかきかき食べて、あとかえってさっぱりするのに、焼肉などというのもあるが、これは煙もうもうで、私――だけではない、女ならたいてい、辟易するであろう、家で食べるしろものではなさそうである。焼肉はやはり焼肉屋で、心おきなく食べたいものである。