ヒューマンエラーの定義

ここで、ヒューマンエラーの定義を考えたい。ここでは、人が自分の思い通りにならなかったときにどのように感じるかということから素朴に考える。何か失敗をしたときに、おそらく「しまった」、「間違った」といった思いを抱くだろう。そして「なんで、そうしてしまったのだろう」、「なんで間違えてしまったのだろう」という後悔の念を抱く。その気持ちの奥には「きちんとできるはずなのに」、「正しくできるはずなのに」という思いがある。

期待した範囲を逸脱

「やれるはずなのにできなかった」ということが「しまった」、「間違った」という気持ちを生み出す。そこで、堅苦しい表現になるが、ヒューマンエラーを次のように定義する(1)。

人が期待された範囲の判断や行為を逸脱し、その結果も期待された範囲を逸脱した場合、その判断や行為をヒューマンエラーという

自分では正しいと期待しておこなったことが、期待からずれていた。そして、その結果も思い通りにならなかった。それをヒューマンエラーと定義する。

オレンジジュースを飲みたくて「オレンジジュース」というところを押したけど、ジュースが出てこなかった。隣にある丸いボタンを押さないといけなかった。このとき、期待された判断や行為は「丸いボタンを押す」ことであった。しかし、「オレンジジュースと書いてあるところを押した」ことは、期待された範囲を逸脱している。そして、「ジュースが出てこなかった」という結果も期待を逸脱している。ここで判断や行為の「期待された範囲の逸脱」が「本来できたはずなのに」を表している。

ここでの定義は筆者が考えている定義であるが、ヒューマンエラーの定義は、製品やサービスの品質・安全・互換性を確保するために定められたJIS(日本産業規格)やISO(国際標準化機構)でも定義されているし、ヒューマンエラーの研究者もそれぞれ自分なりの定義を考えている。ここではひとつひとつを紹介しないが、共通しているのは「意図しない結果」がもたらされていることである。

(1)松尾太加志(2012).「ヒューマンエラー防止のための外的手がかり利用の動機づけモデル」九州大学学位請求論文・人環博乙第52号