ヒューマンエラーは人間の問題の意味ではない

ヒューマンエラーは人間側の行動によるものといったが、それは人間の問題であるということではない。確かに間違ったのは人間であり、人間の判断や行動が期待された範囲を逸脱しているのだから、人間の問題と考えるのが自然である。

しかし、人間側の問題だと考えて調べてみると、実はモノ側の問題で、非常に使いにくいものだとか、わかりにくいものであるとかいうことは少なくない。ヒューマンエラーは、モノとの関わりの中で生じるためである。モノの使いにくさやわかりにくさがヒューマンエラーを誘発していて、それを解決しなければならないことがある。

ドリンクディスペンサーを使っているとき、「これ、わかりにくいよ」、「どうにかならないのかな」と思ってしまうことがあるだろう。自分たち人間が悪いわけではなく、機械のほうが使いにくくしている。「機械のほうを改善してほしい」と思う。この思いは間違っていないことが多い。モノの改善によってヒューマンエラーを防止することが必要になる。

とはいえ、ヒューマンエラーはモノが常に関わっているわけではないと思われるかもしれない。たとえば、人間同士のコミュニケーションのエラーである。そこにはモノは介在しない。ただ、これはコミュニケーションの媒体の問題である。口頭でおこなうことにエラーが発生してしまったのなら、適切な媒体(モノ)を使うことで間違いのないコミュニケーションをおこなうことができると考えられる。メモや文書を使うことが考えられるが、それらはモノであり、そのさいにどのような様式がエラーを生まないかを考えることが必要なので、これはモノの問題となる。

このように、モノの存在を積極的に考えなければヒューマンエラーは解決しない。

※本稿は、『ミスによる事故をどう防ぐか-4種のヒューマンエラーと組織の安全文化』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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