凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』中央公論新社 1550円

書き終わった瞬間、号泣した

とはいえ、最後の3 ページがなかなか書けなくて、書いては消しての繰り返しで2ヵ月も悩みました。そんななか、知人の助言で心理描写をなくして状況だけを書いてみたんです。書かないことでかえって際立つものがあると気づいた翌日、ラストシーンが一気に完成しました。書き終えた瞬間は、感極まってパソコンに突っ伏し号泣。マラソン選手がゴールテープを切った時はこんな気持ちなんだろうな、と思いました。

実は、コロナ禍のなかで人類滅亡ものの小説を出していいのだろうか、と不安でした。でも、担当編集者から「こんな時だからこそ」と背中を押され、出版に踏み切ることに。2011年の東日本大震災の後、人と人とのつながりの尊さがフィーチャーされましたよね。たしかに大切なことですが、そこから弾き出されてしまう人もいるはず。世の中がひとつの価値観で覆われることに私は抵抗があるので、その反動で逆のことを書きたくなるのかもしれません。大がかりな設定でも、私が書きたいのは、人の気持ちや関係性から生まれるもの。今後もそれは変わらないと思います。