血族に絶賛された「稀に見る逸材」は

もう一人、和泉家に外から入ったのは、淳子さんの夫・片山さんだ。IT関係の企業に勤める片山さんは「好きになった淳子さんが狂言師であることを、後から知ったのです。舞台を観て、その姿を心底カッコいいなと思いました。ストレスといえば、昔は白金に住んでいたので、今住んでいる板橋は通勤するのに遠いことくらいです」と飄々と語る。

できることを苦にならない範囲でサポートしている、という肩に力の入らないスタンス。しかし結婚前はお互い実家暮らしで、家事をやる必要がない環境だった。淳子さんは言う。

「結婚して初めて、自分たちがやらないと物事が動いていかないとわかりました(笑)。家の中が嵐の後のようになる時もあります。それでも主人は私に文句を言うことがない。私にとって狂言が大切だと思ってくれているんですね」

片山さんは、抱っこ紐で子どもを抱えて楽屋に待機し、おむつも手際よく処理。舞台で大変な時は、掃除洗濯や洗い物、流しの掃除までやってくれたそう。藤九郎さんが「義兄は私から見ても『稀に見る逸材』。人を受け入れることはできても自分が潰れてしまう人も多いなかで、兄は受け入れながらも、自分を犠牲にしない絶妙なバランス感覚の持ち主です」と、絶賛する。

片山さんは恐妻家ではないようだ。淳子さん曰く「『男はこうあるべき、女はこうあるべき』という先入観がない。私が喧嘩を売っても、買わないところもすごい(笑)」。淳子さんは娘に、「パパのような人を探していたら、見つからないから行き遅れるよ!」と言っているそうだ。

「(夫は)私が喧嘩を売っても、買わないところもすごい(笑)」(和泉淳子さん)