危険を感じれば心も闘う

中野 「怒る=良くないこと」みたいな風潮がありますが、私は一概にそうは言えないと思っています。怒りは人間であれば誰でも感じる自然な感情ですから。たとえば、ウイルスが人体に侵入すると、免疫系の細胞が反応して熱が出ますよね。これはウイルスと闘っている状態。それと同じことは心でも起こる。自分の領域が侵されて危険を感じたり、相手に不快感を抱いたりした時に、私たちは怒るんです。

高嶋 怒りは、身を守る自然な行為と言えるのね。

中野 逆にうまく怒れないと、自分を責めるほうに向かいます。それが高じると、場合によってはうつ病になってしまうことも。だからこそ、適切に、適度に怒ることは体にもいいんです。

高嶋 実は、私が立ち上げた「12人のヴァイオリニスト」の活動では、今年から怒らない方針にしたんです。

中野 それまでは厳しい指導をしていたんですか?

高嶋 そう。去年、テレビで活動の様子を密着取材する企画があったんですが、私には最初から《キレ》が期待されているから、怒らないといけない雰囲気だったんですね。いざ放映された番組を見たら、自分の想像以上に恐ろしい人で……。

中野 効果音や画面の演出でそう見えていただけでは?

高嶋 いえいえ(笑)。それからはほめて育てる方針に変えたら、グループの雰囲気も良くなりました。うちの長男と次男に対してもそうしたいんですけど、やっぱりまだ子どもだから叱らないとダメ。