イラスト:カワムラナツミ
相続は争族とよく言われます。もめる理由の多くは、特定の子どもだけが優遇される、親の介護をした子どもへの配分が少ない、遺言がない…さらには子どもたちそれぞれの配偶者の思惑が絡んでいることも。結城さん(仮名・51歳)の場合、まだ母親が存命のうちからトラブルが発生したと言います。ことの始まりは弟の結婚でした

3人の子を抱えて離婚した私に、弟は冷たく

人に話しても信じてもらえないほど、私をひどい目にあわせた人。それは弟の嫁です。

私は33歳の時、3人の子供を抱えて離婚しました。リストラにあった夫が酒に溺れて暴れるようになったため、母が溺愛する弟と二人で暮らしていた実家に身を寄せることにしたのです。

しかし、それには大きな葛藤がありました。私が幼い頃に父ががんで亡くなると、私と弟の前で母は愛人を家に入れたから。そんな母が大嫌いで、私はずっと恨み続けていました。

弟は私たちに「早く出ていけ」とひどい言葉を投げつけます。離婚した負い目があり、行くあてもない私はただ耐えるのみ。でも1年後、仕事にも慣れ、末っ子も保育園に預けられるようになって、実家から車で30分ほどのところに家を借りました。

朝8時から夕方5時まで仕出し屋で働き、夜は自宅で内職。庭に菜園を作り、仕出し屋から食材の残りを分けていただいて生活を切り詰め、少しずつ貯金もできました。子供たちも一所懸命勉強して、高校では学費が免除される特待生になり、それぞれ大学に進学。生活は決して楽ではなかったけれど、私は幸せでした。