「再び舞台に立つことができた時の喜びは、本当に大きかったです。(中略)『あぁ、なんてすばらしい仕事なんだろう』とあらためて感じました。」(撮影=篠山紀信)
72歳になった今も毎年舞台に立ち、ダイナミックな歌やダンスで観客を魅了する前田美波里さん。心晴れやかに、健やかな日々を送る秘訣が、その暮らしのなかにちりばめられています。発売中の『婦人公論』7月27日号から記事を掲載します。(撮影=篠山紀信 構成=篠藤ゆり)

18歳になる下の孫は、アメリカに留学中

去年はコロナ禍の影響で、途中で中止になった舞台もありました。でも秋には、映画監督フェデリコ・フェリーニの自伝的作品を原作としたミュージカル『NINE』の舞台に立つことができ──私は運がいいのかなと思いました。

稽古中は感染防止に最大の注意を払わなくてはいけないので、マスクをしながら歌い、待ち時間は一人ずつ囲いのなかで待機します。いつもの稽古場の雰囲気とはまったく違うし、肉体的にも精神的にもけっこう大変。ストレスがないと言えばうそになります。

それだけに、再び舞台に立つことができた時の喜びは、本当に大きかったです。それに、久しぶりに生の舞台をご覧になるお客様も多かったようで、その想いが舞台に立つ私たちに伝わってくるんです。「あぁ、なんてすばらしい仕事なんだろう」とあらためて感じました。

しかも『NINE』は読売演劇大賞の4部門にノミネートされ、演出家の藤田俊太郎さん、主演の城田優さん、衣装の前田文子さんがそれぞれ受賞。我がことのようにうれしく思いました。

前田美波里の人生は1回だけれど、作品のなかでたくさんの女性を演じることができるのが女優の醍醐味。「もし私が彼女だったら」と夢見ることもできます。いい奥さん、お母さん役を演じると、離婚を経験している私は、ちょっとうらやましく感じることも。

そんな私ですが、孫にも恵まれているのですから、本当に幸せです。18歳になる下の孫は、現在アメリカに留学中。彼女は子どもの頃から私の小さい頃にそっくりで、私と同じ仕事をしてくれたらいいなと、ちょっと期待していたのですが、まったく興味ないみたいです。(笑)