「正面から彼を見た時、『誰やねん、この人』と思うんですよ。もちろん知ってますけど、違うんだなあ。出会った頃、若かった頃、子どもたちが小さかった頃の夫とは全然違うんです」

横並びから向かい合って

私はどうやら「夫源病」だったらしいです。ある日、家で安藤優子さんの番組を観てたら、「上沼恵美子さんの症状をみると、確実に夫源病ですね」とお医者さんが言うてはるんですよ。夫と気が合わないというのは常日頃ネタにしてましたから、勝手に診断してくれたんでしょう。

確かにその頃、めまいが出たりして体調はよくなかったんです。思わずテレビに向かって「そうですか」と言いました。体調不良の原因が夫だと医学的に認められたわけですよ。夫は不愉快な顔をしてましたけど。

うちだけじゃないと思うんです。世間にも「夫源病」の妻は多いんじゃないでしょうか。じゃあその病はどこから来るんだろうと考えました。妻であるということは、ごはんを作らなあかんとか、そんなことだけではありません。

子どもを育てたり、近所とトラブルがあったら闘ったりと、夫婦が一体となって闘うものや守るものがあったわけです。その時はお互いに「あんたしかおらへん」「おまえだけやで」と、好き嫌いを超えた使命感で結束している。ところが子どもは大人になります。結婚して、独立していきます。

すると、今まで横に並んでいた人が、自分と向かい合って座ることになる。その時が勝負。ここからが夫源病の始まり。正面から彼を見た時、「誰やねん、この人」と思うんですよ。もちろん知ってますけど、違うんだなあ。出会った頃、若かった頃、子どもたちが小さかった頃の夫とは全然違うんです。