離婚をやめたのは、邪魔くさいのが最大の理由

男の人って、社会的な責任がなくなると目が変わりますね。ま、端正な顔は変わらないんですけど(笑)、目がとろりんとして輝きが衰えてくる。本人には言うてませんけど、あらためて夫と向き合った時、そんなふうに感じました。

それから、よう笑うようになりましたね。若い頃は嫁さんが面白いことを言うてもクスリとも笑わない、ニヒルな人だったんです。「くだらないことを言って」という顔をして、それがまたセクシーだったんですよ。

今はしょうもないことを言うたら、「はっはっはっ」と普通のおっさんみたいに笑うようになりました。それはいいことです。でも嬉しさの後に切なさが来ますね。「ああ、歳とったなあ」と。

別居を公にする気はなかったんですが、週刊誌が取材に来たので自分から月刊誌に手記という形で話しました。「(別居するぐらいなら)なんで離婚しなかったんですか」と言われますけど、先ほど申し上げた通り、邪魔くさいのが最大の理由。それでとりあえず別居したところ、距離感が予想外に心地よくて。

和歌山県の白浜にある別荘に夫婦で行ったり、2人の間を犬がころころ歩いてたりする様子を見ていると、「これが楽かなあ」という気になりました。夫は何も言いませんけど、結婚生活45年、言葉に出さなくともわかるキャリアがあるんです。

上沼さんの別荘がある和歌山県の白浜の名勝・円月島