高倉健さんからご指名をいただいて

あれは1982年の秋、私が出演したTBSのドラマ、『淋しいのはお前だけじゃない』が大ヒットした直後でした。

1985年に行われたインタビューでの梅沢富美男さん。この時35歳(『婦人公論 昭和60年10月号』より)

一躍時代の寵児となった私のもとに、健さんが主演する『居酒屋兆治』という映画の出演オファーが届きました。

「ご本人が梅沢さんの芝居をご覧になっていて、『彼にぜひ出て欲しい』とおっしゃっています」

泣く子も黙る健さんのご指名。私もニヤニヤが止まりません。

――この俺がついに銀幕デビューかぁ。

浮かれた気持ちのまま、真っ先に報告したのは、『淋しいのは〜』で起用してくださった大恩人である、TBSの高橋一郎監督でした。

「監督、かくかくしかじかで……」

「おい、すぐにそっちへ行くから、返事はいったん待て!」

そう言うと、一郎さんは事務所までスッ飛んで来られました。