高倉健さんからご指名をいただいて
あれは1982年の秋、私が出演したTBSのドラマ、『淋しいのはお前だけじゃない』が大ヒットした直後でした。
一躍時代の寵児となった私のもとに、健さんが主演する『居酒屋兆治』という映画の出演オファーが届きました。
「ご本人が梅沢さんの芝居をご覧になっていて、『彼にぜひ出て欲しい』とおっしゃっています」
泣く子も黙る健さんのご指名。私もニヤニヤが止まりません。
――この俺がついに銀幕デビューかぁ。
浮かれた気持ちのまま、真っ先に報告したのは、『淋しいのは〜』で起用してくださった大恩人である、TBSの高橋一郎監督でした。
「監督、かくかくしかじかで……」
「おい、すぐにそっちへ行くから、返事はいったん待て!」
そう言うと、一郎さんは事務所までスッ飛んで来られました。