『人生70点主義―自分を許す生き方』(著:梅沢富美男/講談社)

美空ひばりさんから共演のお話が

さて、それから数年後のこと。今度はひばりさんの事務所から連絡をいただきました。

「ひばりと一緒に、舞台に立ってもらえませんか?」

ひばりさんは歌だけではなく、新宿や梅田のコマ劇場を中心に、芝居にもたいそう精力的に力を注いでおられました。

――今度こそ逃さないぞ。

健さんの一件で懲りた私は、すぐさま共演を快諾しようと決めました。

とはいえ、当時の劇団の座長は兄貴。上下関係は絶対の世界ですから、事前に話を通しておかないわけにはいきません。

「兄貴、ひばりさんから共演のお話をいただいたんだけど……」

喜び勇んでこう切り出した私を一瞥すると、彼はこう言い放ちました。

「その話、断れ」


いつか見た光景。