人生は死ぬまでのひまつぶし

泥まみれになって、心地よい疲れを味わう……まずはプランターで苗を育てるところからでもけっこうです。ぜひ、土いじりの魅力を体感してほしいと思います。

40代の頃、私は畑を耕しながらネタを練習しては、全国のパーキングエリアに出向いて観光バスの添乗員さんたちに、私の漫談を録音したカセットテープを配っていました。

これが次第に口コミで話題となり、2002年にCDをリリースし、ブレイクすることができました。

キャバレーで司会業をしていた頃から始まった、長い30年間の下積み時代を経てのブレイク。「潜伏期間30年」の経験が糧(かて)となり、今の私があります。

不思議なものです。「自給自足の生活も悪くないな」と思っていたらブレイクして、ほとんど畑に行けなくなった。ところが、コロナ禍になり、再び畑と向き合えるようになったのです。

濃厚接触を避けて農耕接触ができるようになったのは、運命のいたずらなのかもしれません。

人生は死ぬまでのひまつぶし。コロナで世間はまだ混乱していますが、もう少し前向きに、気楽に生きていこうと思います。

※本稿は、『我が家は前からソーシャル・ディスタンス』(マキノ出版)の一部を再編集したものです。


『我が家は前からソーシャル・ディスタンス』(著:綾小路きみまろ/マキノ出版)

大人気漫談家・綾小路きみまろ、70歳を迎えて書き下ろした最新エッセイが誕生。抱腹絶倒! 愛ある毒舌を交えながらシニア世代のお悩みをズバッと解決&最新爆笑ライブも紙上再現!