歳を重ねるごとに悩まされる人が増える腰痛や足のしびれ、痛み。その原因の一つに「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」があることをご存じでしょうか。神経が圧迫されて痛みやしびれが出る病態のことを指しますが、神経疾患に詳しく、福島県立医科大学理事長兼学長を務めた菊池臣一先生によると、社会の高齢化に伴いその数は増え、推定患者数は350万人にまで達しているそうで――
70歳以上なら2人に1人は脊柱管狭窄になる可能性アリ
腰や足が痛かったり、しびれがあってつらくてたまらない。歩いているとふくらはぎがしびれて歩けなくなる。立っているだけで足腰が痛くてしゃがみこんでしまう。このような腰や足のしびれ・痛みのつらい症状に悩んでいる人が急増しています。
実はこれらの症状は「脊柱管狭窄症」だと考えられます。
脊柱管狭窄症とは、腰椎(背骨の腰の部分)の内部を縦に通る脊柱管というトンネルがなんらかの原因で狭くなる結果、その中を通る神経が圧迫されて足腰に痛みやしびれがあらわれる病態のことをいいます。
神経が圧迫された状態が長時間にわたって続くと炎症が生じて、腰痛や下肢のしびれ、坐骨神経痛などの症状が現れます。進行すれば、強いしびれやマヒの症状がでて、こまぎれにしか歩けなくなります(これを間欠跛行といいます)。
そして、脊柱管狭窄症の患者は年々増加しています。腰部脊柱管狭窄の推定患者数は約350万人に上がると報告されています。
60歳代では20人に1人、70歳代では10人に1人に発症しています。最近の調査では、70歳以上の2人に1人が脊柱管狭窄になる可能性があるといわれています。すでに足腰になんらかの異変が現れている人はもちろん、中高年になれば誰もが脊柱管狭窄症の予備軍です。
しかしじつは診断基準も医師によって異なり、すべての人が納得するエビデンス(科学的根拠)の高い、決めてとなる治療方法もまだ見つかっていないのが実情です。それでも、もちろんわたしたち医者は手をこまねいているわけではありません。そのときどきの状況に応じて、担当医師に相談しながらいちばんよい治療方法を選んでいけばよいかと思います。