60年もの長きにわたり、休むことなく走り続けてきたファッションブランド「YUKI TORII」デザイナーの鳥居ユキさん。79歳になる今も、勢力的に仕事をするバイタリティはどこからくるのでしょうか(構成=内山靖子 撮影=宮崎貢司)
100%満足しないから次のパワーになる
19歳のときに、母のファッションショーで初めて作品を発表して以来、ファッションデザイナーとして今年で60年を迎えます。デザイナーの先輩である母に、「年2回、ショーで発表することがデザイナーの使命」と告げられていたので、デビューから今日まで1度も休んだことはありません。
先日、2022年春夏コレクション「マイ・フラワー・ガーデン」をオンラインで発表したところですが、すでに次のコレクションのことを考えています。
この60年の間に、デザイナーをやめたいと思ったことも、仕事のペースを落とそうと考えたこともない。今も朝9時に出勤して仕事をしています。走り続けていないとアイディアは浮かんでこないですからね。毎回、自分のすべてを出し切ってこそ、次につながっていくのだと思います。
もちろん、一つのショーを仕上げるまでには大変なことや苦しいこともあります。100%満足できるなんてありえない。だからこそ、「次もやらなくちゃ!」という思いが湧いてくる。前回のショーでやり残したことがあるから、それを熟成させて、次はもっといい形で表現しようというパワーになっているのです。
私、終わったことは振り返らない性格なんですよ。だから、「60年の間に苦労はありましたか?」と聞かれても、何一つ浮かんでこない(笑)。失敗なんて、1分たてば忘れちゃう。うじうじと落ち込んでいる時間がもったいないでしょう。「これがダメなら、次はどうすればもっとよくなるか」と考えたほうが、先に進んでいけるんです。