でも子どもたちには、「待つ」ことや「譲る」ことを覚えてほしいので、むしろチャンスだと思っているんです。同居した当初は、子どもたちに悪いことをしたかもと悩んだ時期もありました。でもある人から、「理不尽は親から最初に教わるもの。そこから学ぶことも多いから気にしなくていいのよ」とアドバイスをされたことを思い出して吹っ切れました。
それに、自分たちを無条件に愛してくれる人が2人も近くにいて、子どもたちは幸せですよ。私に怒られると、おばあちゃんの部屋に逃げ込みますから。家庭内にそんな逃げ場があるのも、3世代同居のありがたいところだと感じています。
高齢の母たちは、同居後も刻々と体調が変化しています。いまのところ2人とも元気ですが、この先どうなるかはわかりません。糖尿病を患い、足腰が衰えている実母は、数年後に歩けなくなっている可能性もあるでしょう。でも、そうなったらそのときどきで臨機応変に対応していこうと思っています。
そもそも、同居することと、在宅介護はイコールではありません。お風呂が2階にあるわが家では、義母が階段を上り下りできなくなったらどうしよう? という不安は同居をスタートするときからありました。でも、2階に上がれなくなったらデイサービスを頼んで入れてもらおうと義母とは話し合っており、家族全員が納得しています。
母たちも「子どもたちに負担はかけたくない」と思っているようなので、状況に応じて公的サービスや施設を前向きに利用していくつもりです。
自分の介護でわが子が疲弊していく姿を見るのは、親もつらいはず。母たちに、「長生きしなければよかった」とは思ってほしくない。笑顔で大往生してもらうにはどんな方法や手続きがあるのか──、夫の姉や私の姉も含めて、みんなで勉強していきたいと思っています。
これから少子化が進むにつれて、わが家のように双方の親と同居するケースも増えてくるのではないでしょうか。「こうすればうまくいく」という正解はわからないけど、家族みんなが幸せに過ごせる方法を、その都度きちんと話し合い、柔軟に考えることさえできれば、きっとなんとかやっていけるはずだと思います。
この取材をお受けしたときには健在だった実母が、その後体調を崩し永眠しました。たくさんの愉快な思い出とともに、最後まで私を見守り育ててくれた母に、いまは感謝の気持ちでいっぱいです。