95歳になってもやりたいことがいっぱい

実は去年の天候の影響で笹の葉の収穫が例年より少なく、不足しているんですよ。保存してある笹の葉が3月でなくなる。つまり6月に山に採りに行くまで笹餅を販売できないんです。「2ヵ月間、笹餅作りが休みになる。95歳だし、このまま引退かなぁ」と地元の新聞社の人が取材に来たときにぽろっとこぼしたら、それが記事に載ったんです。

そしたらね、「おばあちゃん、無理しないで少しでも長く続けてください」という温かい手紙や電話をたくさんいただいて。みなさんに恩返ししたい気持ちもいっぱいある。量を半分にしてでも続けていこうという気持ちで今はいます。

あと5年で100歳ですからね。私には餅だけでなく、いろんな趣味があるんです。暇さえあれば、うちの周りでお花を植えてます。サルビア、ペチュニア、朝顔……。野菜もナス、トマト、キュウリと、3種類作っています。

編み物や刺繍も好き。夫のパジャマを、ボタンを女用に付け替えて、花の刺繍をして自分で着ています。コロナが明けたら、消費者の会の会合で「編み物をしましょう」という計画もあり、楽しみです。温泉にも浸かりたい。(笑)

それと、笹餅の作り方を若い人に伝えねばと思います。これまでも小学校などで教えてきました。この間は、初めてオンライン――最近覚えた言葉です(笑)――で講習会をしました。コロナ前には、私の笹餅作りを習いたいと、東京の和菓子職人さんがおいでになった。

今も教えてほしいという要望をたくさんいただきますから、培ってきた経験や知恵すべてをお教えしようと思っています。ですので、100歳までの5年間は趣味を楽しみながら、できる限り笹餅に携わっていきたいと考えています。

振り返ると、60歳までは与えられた仕事をして、それで生きてきました。60歳で餅作りに出合って、「あー、わ(私)でもできるんだ」と思ったんですよ。60歳過ぎてから何にでも挑戦して、今の自分がある。すべてのことに感謝です。

いま、ふと、こんな言葉が頭に浮かびました。

「還暦老いて歩む道、情けを請けて九五(くご)の笹餅」