愛犬のために東京から軽井沢へ

それにしても、怠け者でアクティブとはほど遠い生活をしていた私が山登りとは、自分でも信じられません。人生というのは、本当に何が起こるかわかりませんね。

そもそもなぜ山登りを始めたのかといえば、00年、45歳の時にセントバーナード犬の「涙(ルイ)」を飼い始めたことに端を発します。暑さに弱いルイのために、当時暮らしていた東京から軽井沢へ引っ越したのは03年のこと。

ルイは目を輝かせて1日3度の散歩に出かけ、私は私で浅間山を眺めたりと自然を楽しむように。軽井沢の生活は、ルイにも私にもとても合っていたのです。

八ヶ岳連峰の最高峰・赤岳で(写真提供:唯川さん)

そこで、転居して初めて手掛けた連載小説の舞台は軽井沢にしようと決めました。「主要な登場人物たちが、軽井沢の象徴である浅間山に登るシーンで幕を開けようと思う」と編集者に伝えたところ、「だったら浅間山に登りましょう!」と誘われて。でもその時は気乗りがしなかった。

実は30代の頃に山好きな編集者に誘われて、作家仲間たちと一緒に高尾山に登ってバテバテになり、登山とは相性が悪いと痛感した経験があったからです。