教え子からの「おめでとう」

直木賞を受賞した時も、一番うれしかったのはダンス講師時代の教え子100人くらいから「おめでとう」というメッセージをもらったことです。自分の近況を知らせてくれる子もいたんですが、自分の夢に真っ直ぐ向かっている子もいれば、以前の僕のように立ち止まったり、挫折を経験したりする子もいる。そういう子が僕の受賞の知らせを聞いて、「もう1回、頑張ろうと思った」と言ってくれたのは、うれしかったですね。

これはいろいろなところでお話ししていることですが、僕が作家を本気で目指そうと思ったきっかけを与えてくれたのは、教え子なんです。ダンス教室では子どもたちに夢を持つことの大切さを教えていた僕ですが、ある日、一人の生徒から「翔吾くんも諦めてるやん」と言われて、すごくショックを受けて。

翌々日に父に「仕事を辞めたい」と伝え、教室の子どもには「30歳になっても夢は叶うことを証明する。絶対に直木賞を獲る」と宣言しました。その時はまだ、一作も小説を書いたことがなかったのに。(笑)

その状況から2年で作家デビュー、そして5年で直木賞。まあまあ早いほうなのかな。

ダンス教室の教え子と